篠本拓海とVOLVOの出会い

篠本拓海は、東京芸術大学でインダストリアルデザインを学んだ後、1990年代初頭にVOLVOのデザインコンペに参加したことをきっかけに、スウェーデンのイェーテボリにあるVOLVOデザインセンターへの道を開きました。当時、日本の自動車デザインの革新的なアプローチに注目していたVOLVOは、篠本の斬新なデザイン提案に強い関心を示しました。彼の「スカンジナビアンデザイン」に対する深い理解と、日本の美意識を融合させた独自のアプローチは、VOLVOの幹部たちの心を捉えました。

具体例:1995年に篠本が手がけたVOLVO S40のコンセプトモデルは、従来の直線的なデザインに曲線美を取り入れ、VOLVOのデザイン言語に新しい視点をもたらしました。

  1. カーデザイナーとしての軌跡とVOLVOでの功績
    VOLVOでの20年以上のキャリアを通じて、篠本拓海は安全性と美しさを両立させる新しいデザイン哲学の確立に貢献しました。特に注力したのは、北欧デザインの特徴である「ミニマリズム」と「機能美」を現代的に解釈し、グローバル市場で通用するデザイン言語の開発でした。彼のリーダーシップのもと、VOLVOは従来の箱型デザインから脱却し、より流線型で動的なフォルムへと進化を遂げました。また、サステナビリティを考慮した材料選択や、革新的な室内デザインの開発にも積極的に取り組みました。

具体例:2015年に発表されたXC90のデザインプロジェクトでは、「Thor’s Hammer(トールハンマー)」と呼ばれる特徴的なLEDヘッドライトデザインを考案し、現代のVOLVOを象徴するデザイン要素として定着させました。

  1. 新世代のVOLVOデザインに込めた想い
    篠本拓海がVOLVOの新世代デザインに込めた想いは、北欧デザインの本質を追求しながら、現代のモビリティニーズに応える革新的なアプローチです。スカンジナビアンデザインの特徴である「レス・イズ・モア」の考えを基本に、不必要な装飾を排除し、機能性と美しさを両立させています。特に電動化時代における新しいVOLVOのデザイン言語では、エアロダイナミクスと視認性を重視しながら、ブランドアイデンティティであるソー・ハンマーLEDヘッドライトを進化させ、より洗練された形状へと昇華させました。インテリアデザインでも、サステナブル素材の積極的な採用と、直感的な操作性を追求したミニマルなコックピットデザインを実現しています。

具体例:
・EX30のフロントデザイン:従来のグリルを廃止し、スマートなクローズドフェイスを採用
・EX90のインテリア:95%リサイクル素材を使用したテキスタイルと、14.5インチセンターディスプレイによるミニマルデザイン

VOLVOの新時代を象徴するデザインフィロソフィーは、安全性と環境への配慮を最優先しながら、スカンジナビアンデザインの新たな解釈を示しています。電動化やデジタル化という技術革新に伴い、デザインも大きく進化を遂げましたが、VOLVOらしさは決して失われていません。むしろ、より純粋で本質的な形へと昇華されているのです。篠本拓海の指揮のもと、VOLVOは伝統と革新のバランスを巧みに取りながら、持続可能なモビリティ社会に向けた新しいデザインの方向性を示しています。これからのVOLVOは、より一層環境に配慮しながら、人々の生活に寄り添う存在として進化し続けることでしょう。